
大使閣下の料理人
活気あふれるベトナム・ハノイ。そこに大沢公(櫻井翔)とレイ・ティー・蘭(剛力彩芽)の姿があった。 公は在ベトナム日本国大使館の公邸料理人。専門はフレンチ。蘭は公の料理助手をしており、2人は食材を選んでいるのである。 公と蘭が大使館に戻ると、ベトナム語の専門職員・古田誠一(大倉孝二)が、ベトナムの外務大臣であるグエンを招き、公と在ベトナムフランス大使館公邸のシェフが料理を出し合う設宴を開くことになった、と言う。その裏には、ある“外交の思惑”が隠されていた。 日本の外務省にて、外務事務官・江口悟(加藤シゲアキ)は、ベトナムへの新幹線売り込みに関して話していた。新幹線の海外セールスは日本にとって国家的な計画である。ベトナムへ売り込む端緒を探っていたところ、設宴を口実に、グエン大臣を大使館へ招き、その話ができるチャンスが生まれたのだった。 色めきだつ在ベトナム日本国大使館の一方で、公と蘭はグエン大臣の名を聞き、公が公邸料理人として初めてつくった料理のことを思い出していた。 2年前。ある一流ホテルの調理場。そこで副料理長を務める公は、料理長の村上信蔵(竹中直人)に上申した。「お客様に気持ちが届いていないんじゃないでしょうか」。 ホテルの特性上、どうしても何百人もの客を相手にしなくてはならない。しかし、できれば客一人一人の顔を見て、気を配って料理を作りたい、という思いを公は抱いていた。そんな折、たまたま公は「公邸料理人、募集」というパンフレットを見つける。「これなら気持ちの伝わる料理が作れるかもしれない」。 妻の大沢ひとみ(広末涼子)は、公邸料理人になる事に反対した。しかし公の“料理バカ”な顔を知っており、最後には小さな娘と共に、一番の理解者として公を海外へ送り出すこととなった。 公邸料理人としての初めての勤め先は、在ベトナム日本国大使館となる。駐ベトナム日本国全権大使である倉木和也(西田敏行)は、着任したばかりの公に、こう告げる。「外交における食卓には、すべて意味がある」そして公は、早速、たっぷりと“外交の思惑”が盛られた設宴の料理作りに挑むことになるのだが・・・。